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広島県高校入試解析③「公立高校選抜Ⅱの出題傾向」

塾教師の視点から広島県の高校入試を解析していこうというシリーズの第3回です。

自分自身の考えを整理し、まとめておこうという思いもあって始めたのですが、

当初予想していたよりも長くなりそうな気がしてきました。

今回は自身が担当している教科でもある社会の実際の問題を例にとりつつ、広島県の公立高校入試の問題傾向について述べていこうと思います。


※広島県教育委員会は例年5月にその年の選抜Ⅱの問題についての詳細な分析を公表しているのですが、そこには1問ごとの正答率まで記載されています。文中の平均点等はそちらを参照させていただきました。


今回取り上げるのは2021年度(令和3年度)の選抜Ⅱ・社会の入試問題です。

歴史分野から明治時代初期の経済史に関する問題です。

レポート内の3つの空欄を埋める形式なのですが、

1877年の西南戦争の際に政府はその戦費を賄うために紙幣を大量に発行したことで貨幣価値が下落する一方、物価が上昇した(インフレーションが発生した)という貨幣経済の基本原理を理解していれば空欄aとbは解答できます。

また、空欄cのみ論述形式の出題となっていますが、これはインフレの発生を受けて政府が日本銀行を設立し、貨幣の発行権を一元化することで物価を安定させようとしたことを説明させるものです。


とまあ、解説すれば以上の内容になるのですが、この問題はこの年の社会の問題中、最も平均点が低いものでした。空欄aとbにあてはまる語句を選ぶ記号選択問題の正答率は36.8%、空欄cの論述問題に至っては僅か7.3%となっています。

① 比較的苦手な生徒が多い社会経済史からの出題であったこと

② 複数の資料と日本銀行設立の理由に関する知識を結びつける論述形式であったこと

③ 歴史分野(明治初期の経済)と公民分野(貨幣経済の原理)を組み合わせたものであったこと

などが理由として考えられます。

またもうひとつ思い当たるのは、2020年春から新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で全国一斉休校が続いたことで、中学校の学習カリキュラムは大きく混乱しました。学習塾教師の感覚も含めて言えば、特にこの年の受験生は3学年後半で学習する公民分野はかなり駆け足で進んだようにも思います。結果として貨幣経済の原理など、経済に関する内容を丁寧に学べた生徒は少なかったのではないかということです。


ただこの年の社会の問題は全体的には平均点が上昇しました(22.0点→26.5点)。

記号選択や語句を答える形式の問題が増加し、論述形式の問題がぐっと減少したことが理由として考えられますが、他の教科では難化したものもあります。やはり入試全体を通して見れば2017年や2018年あたりのような極端に難しい入試ほどではないにせよ、思考力や判断力、表現力を問う流れは続いているといえるでしょう。


では今年の受験生が社会に関してあと残り2か月でするべきことは何か、

それは端的にいえば「基本事項の徹底」と「論述問題の練習」です。

ふだんあまり見かけない写真やグラフ、図表を用いていてもそれを読み解く土台は教科書を中心とした基本的な知識です。

中1内容からもう一度復習するとして、ここから1日1単元進めていっても入試までには充分間に合います。

またどんなに難解に見える論述問題であっても、そのほとんどが「知識」と「資料」を組み合わせて解答するものです。正確な知識を生かし、資料から得られた情報を整理して表現できるようになれば、合格に必要な点数を積み上げていくことができるはず。

先ほどの論述問題の正答率は7.3%ですが、実は部分正答(いわゆる△、部分点ですね)となった生徒が31%もいるのです。ここで掴み取った1点、それが合否を大きく左右するのです。


さて、今回はこの辺りで。次回からは入試制度に関するお話に移行していきます。


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