塾教師の視点から高校入試をじっくり解析していこうという企画、久々の更新です。
これまでは主に入試問題に関してお話してきましたが、今回からは入試制度に関してまとめていきます。
約20年続いた広島県の公立高校入試制度が大幅に見直されることが明らかになったのが2019年のこと。そこから様々な議論を経ていよいよ2023年度入試(つまり現在の中学3年生が挑む入試です)から新たな制度が適用されます。
ちょうど先月の終わりに入試日程や選抜の実施内容について、かなり詳細な情報が発表されました。これでほぼ入試そのものの全体像は見えてきたと思われます。その中で今回注目するのは「入試日程」です。
選抜Ⅰと選抜Ⅱを統合し「一次選抜」を実施する
このことは以前から明示されていました。個人的には選抜Ⅰの廃止には賛成です。なぜなら選抜Ⅰという入試は受験生にとってリスクが大きく、総合的に見てデメリットのほうが多いとずっと思ってきたからです。そもそも選抜Ⅰは定員が少なく、特に人気校や上位校では高倍率は避けられない状況が続いていました。また主に調査点(内申点)と小論文、面接で合否を決定するしくみだったため、客観的に合否の可能性を判断しにくく、いわば「見えにくい」「受かりにくい」入試でした。その一方で選抜Ⅰは多くの受験生にとっては人生で初めての入試にあたります。また長く厳しい受験勉強が続く中で、できることなら早く合格を決めたいと思うのは受験生の偽らざる本音だったでしょう。その結果、選抜Ⅰ対策に時間を取られすぎてしまい、本来注力するべき5教科の学習がおろそかになるケースも…(実はこのことが最も大きなリスクだったと思います)。
以上の点から選抜Ⅰはあくまで「チャンスが2回ある」という制度だと捉え、最大目標は選抜Ⅱで合格することだと受験生には伝えてきました。だから選抜Ⅰを受検する場合でも、5教科の勉強時間を削ることは絶対にしないこと。その意味では選抜Ⅰを受けるのは決して楽をして合格できる近道などではなく、かえってきつい選択になるとも。
もちろん新たな制度では一次選抜のみになったことで「チャンスは1回だけ」しかないのですが、それでもこの形の方が合格に向けて予断を与えることなく、集中して取り組めるのではないかと思っています。
入試時間割も変更。5教科の試験を1日で実施。
先日発表された入試日程によると、2023年度の公立高校一次選抜は2月27日(月)・28日(火)に実施されることがわかっています(3月1日は予備日)。旧制度と比べて入試が約1週間前倒しされることになりました。ただその前に多くの受験生は私立高校の入試を経て当日を迎えるのでいわゆる「入試モード」のスイッチは入っているはず。さらに「合格力」を高めていく受験勉強は長期的なスパンで行うものなので、1週間の前倒しが合否に与える影響はそれほど大きくないと見ます。
ただし旧制度では5教科の学力検査を「国語・数学・社会」「理科・英語」と2日に分けて行っていたのに対し、新制度では初日(27日)に一気に終わらせ、さらに自己表現カードの記入を行う予定になっています。極度の緊張感の中、5教科全ての入試問題を1日で解ききるのは一定以上の精神的スタミナとでも呼ぶべきものが要求されるでしょう。しかも以前述べた通り広島県の公立入試問題は論述・記述形式の問題が中心です。この点が合否を分けるポイントの一つになりそうな気もします。また2日目(28日)は自己表現を行うことも併せて発表されています。
今回は先日の発表を踏まえて入試日程に関する分析を行いました。出願の時期や旧制度では存在した一度願書を提出したあと倍率を見ての変更、差し替えが可能なのかなど不明な部分もあるため、今後さらに追加で発表される情報もあるかと思います。
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